ノイズキャンセリングとは

イヤホンやヘッドホンにノイズキャンセリングという謳い文句の商品が増えてきたように感じませんか。

以前は上級モデルにしか付いていなかったこの機能が最近では1万円以下のスタンダードモデルにも付いていることがあるくらい一般的になりつつあります。「Noise Cancelling」を訳せば「騒音を消す」という意味ですが、なんとなくわかってるけど詳しくは知らない人が多い機能ではないでしょうか。
街中や電車など騒がしい場所でも周囲の騒音を軽減し、音楽のみをクリアな音質で快適に楽しめる機能のことです。

わたしがイヤホンを選ぶときは音質よりもノイズキャンセリング性能を重視します。
これからノイズキャンセリング機能を重視してイヤホンを購入する人にぜひ抑えてもらいたいポイントと製品の選び方を解説します。

ノイズキャンセリング誕生の歴史

ノイズキャンセリングは、もともと航空機向けに開発された技術です。

世界的音響メーカーBOSEの創業者アマー・G・ボーズ博士が1978年ジェット機に搭乗した際、ヘッドホンをつけているにも関わらず、機内に響くエンジン音の大きさに驚き、その騒音を打ち消す理論を考案したことに端を発します。なんとそのフライトが終わる頃には騒音とは逆の振動を与え、その騒音を消すというノイズキャンセリングの理論が完成していたというから驚きです。

しかし1970年代のBOSEは業務用製品を製造する小さな音響メーカーであり、ノイズキャンセリング製品の開発に10年の期間を費やすことになります。1989年まずは航空機のコックピット内のコミュニケーションを円滑にするノイズキャンセリング機能付きヘッドセットがパイロット向けに製品化されました。

そしてさらに約10年後の2000年に一般向けヘッドホンにノイズキャンセリング機能のついた今に続くQuietComfort初代モデルが発売され、本格的にノイズキャンセリングヘッドホンの時代がはじまりました。

意外と新しいノイズキャンセリングの歴史。現在もノイズキャンセリングの技術をリードするBOSEが切り開いたジャンルだったのです。

ノイズキャンセリングの種類

ノイズキャンセリング(NC)には種類があります。大きく分けてアクティブノイズキャンセリング(ANC)とパッシブノイズキャンセリング(PNC)の2つです。ここからはANCとPNCに略して呼ぶことにします。

アクティブノイズキャンセリングとは

ヘッドホンやイヤホンでノイズキャンセリング機能といえばアクティブノイズキャンセリングANC)を指します。ANCは製品本体に内蔵された集音マイクで周囲の騒音を拾い、騒音と逆位相の音波をイヤホンからぶつけて騒音の音波を打ち消す機械的なノイズキャンセリング技術です。
ANCで除去できる騒音は主に低域から中域で、人の声やドアの開閉音など高域や鋭い音の低減は苦手です。また音が反響する狭い室内よりも野外のほうが効果が高いという特徴があります。

パッシブノイズキャンセリング

パッシブノイズキャンセリングPNCは耳を塞いで音を遮断し、騒音を軽減する物理的なノイズキャンセリング技術です。
ヘッドホンなら耳を覆うカップが、イヤホンならイヤーピースがその役割を果たしています。そんなことかと思うかもしれませんが、使用する素材や構造で大きく騒音が軽減されます。
PNCで除去できる騒音はANGと逆で主に中域から高域に強いのが特徴です。

ANCと混同されがちなクリアボイスキャプチャー

ANCとPNCの他にクリアボイスキャプチャーCVC )というノイズキャンセリング技術があります。QVCは多くのマイク付きイヤホンに付いている機能で通話中のみ動作し、周囲の騒音を除去し音声をクリアに明瞭化することを目的としていてiPhoneにも付いています。
QVCは通話時のみに動作する機能であり、QVCが付いているからといってANCのように使うことはできません。ノイズを軽減するという部分では同じですが、QVCは通話時の音声をよりクリアにする機能で、ANCは音楽をよりクリアに聴く機能です。
両者は目的が違う技術なのでCVCをANCと混同しないよう注意してください。

ノイズキャンセリング界の2大メーカー

ノイズキャンセリングのジャンルで2大メーカーといえば、BOSEとソニーです。

この分野を定着させたBOSEがしばらくはノイズキャンセリング製品の覇権を握っていましたが、そこに割って入ったのがソニーです。

ソニーはNC機能を従来のアナログ方式から当時不可能と言われたデジタル処理させることに成功。精度が大幅に向上しただけでなく、飛行機、電車やバス、オフィスなど環境に応じた最適なノイズキャンセリングモードへ調節することも可能になりました。デジタル化した世界初のヘッドホンMDR-NC500が2008年に登場すると、BOSEを一気に性能で追い越しました。

SONY MDR-NC500D

出典:sony.jp

しかし、BOSEもソニーをすぐに追い抜き、新製品を出す度に両者が人気・性能面でしのぎを削る状態が現在も続いています。

近年ファッション性とプロユースを意識した独特なブランディングを展開するBeats(ビーツ)がヘッドホンで台頭してきました。
2006年に生まれた新しいメーカーですがプロミュージシャンの愛用者も多く、注目や話題を集めています。2014年Appleに買収され、Apple製品との親和性が高まりました。
NCのジャンルでも新興勢力として浮上。アメリカではハイエンドヘッドホンのカテゴリで既に大きなシェアを占め、Appleという巨大資本がバックに付いた今後の展開から目を離せません。

ノイズキャンセリングで消せる音と消せない音

NC機能付きの製品は、騒音を軽減することができます。しかし、どんな音でも完全に無音化できるわけではありません

よく間違って認識されている点ですが、NC製品のマニュアルなどにも「乗り物や空調などの主に低い周波数帯域の騒音に対してもっとも効果を発揮します。すべての音が打ち消されるわけではありません。」という説明がされているように、高い周波数の音には効果が弱く、人の声や衝撃音など鋭い音は苦手という認識をもって期待しすぎないことが重要です。

逆にいうと人の声や衝撃音などの鋭い音をどこまで軽減できるかが、NC性能の評価のポイントにもなります。
上位モデルは、ANCの苦手な高音域をPNCでカバーし、耳に当たるパッドの素材や形状が工夫されています。当然かもしれませんが、基本的に価格に比例してNCの性能と機能はよくなります。

最適なノイズキャンセリング製品を選ぶには

NC機能をどんなシチュエーションで使用するかによって最適な製品も変わります。
騒がしい電車やバスの中でクリアな音質で音楽を聴きたい人なら1万円以下のコスパの良いモデルで充分に満足することができるでしょう。
静かなオフィスや図書館で耳栓替わりに使って作業中の集中力を高めたいという人は、高性能な上級モデルがおすすめです。

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室内で静かな環境を作りたい人へ

NC機能を使って室内に無音空間を作りたいと思っている人は意外と多いのではないでしょうか。

室内の騒音というと人の話し声やテレビの音、ドアの開閉音だと思います。この音は中音から高音域でANCが苦手とする音です。さらに狭い空間では壁からの音の反響もANCにとって悪条件となります。つまり、室内の無音化は難易度が極端に高いのです。

室内でテレビを付けている場面を例にNCヘッドホンの上級モデルで、どの程度の効果があるか説明すると、室内の空調など低音域の音はほぼ消しさりますが、TVの音声は少しだけ音が小さくなるものの静寂の中でクリアに聞こます。上級モデルでも、ないよりマシな程度の効果です。

がっかりした人もいると思いますが、上級モデルであればフルボリュームの1/4程度の音量で音楽を流すだけで、人の話し声もほとんど気にならないレベルにまで軽減されます。音楽を流したくない場合は、ホワイトノイズを再生するアプリで雨や滝などの自然音を流すと最高の効果を得られます。

室内空間の無音にこだわる人へ

NCの上級モデルイヤホン、ヘッドホンなら音楽を流すことで室内でも周囲の音が気にならないレベルに低減させることが可能です。しかし、無音というのは前項で説明した通り実現が難しいのが実情です。

2019年9月現在でNC性能が最も高いと評価を受ける現行モデルのヘッドホンはSONYのWH-1000MX3とBOSEのQuietConfort35です。両モデルはノイズの処理方法に違いはありますが室内のNC性能は、わたしの耳ではほぼ同じで、どちらも室内のテレビの音を少し軽減させる程度です。

一般的にイヤホンタイプよりもNC性能が高いと言われるヘッドホンタイプですが、野外ではヘッドホンのほうが効果が高いと感じるものの、室内の環境ではイヤホンでNC性能が最も高いBOSEのQUIETCONTROL30クラスなら、WH-1000MX3やQuietConfort35と大差はありません。

ヘッドホンタイプなら、イヤホンタイプと違い、ヘッドホン+耳栓という組み合わせで遮音することが可能です。耳栓は高音域に強いので、ANCの弱点を補うことができるような気がします。

最強のヘッドホンと耳栓の組み合わせ。

カーレーサーなどが使う最強の耳栓MOLDEX CAMOと最強のNC性能を誇るSONYのWH-1000MXヘッドホンの組み合わせを試しました。
しかし、この組み合わせでも、テレビの音はヘッドホンのみの時より少しだけ軽減されるもの、ハッキリと聞こえます。

本ブログでは、最強のNCヘッドホンと最強のNCイヤホンの組み合わせなど、どこまで無音空間を作れるかチェレンジしていくので興味のあるかたはチェックしてください。

個人的NC最強イヤホン・ヘッドホン

BOSE QUIETCONTROL30

出典:bose.com
SONY WH-1000XM3

出典:sony.jp

ノイズキャンセリングまとめ

ノイズキャンセリングについてネガティブなことも書きましたが、騒がしい環境で音楽を楽しむには最適な機能です。それが本来の目的なので、それ以外の用途であまり文句を言ってはいけません。

NC性能については新製品が出るたびに新しい〇〇を採用、性能が〇%アップしたなどという説明を見かけますが、SONYのヘッドホンでいうなら2016年に発売されたMDR-1000X以降現在のWH-1000XM3まで体感的には耳に聞こえるNC性能にそんなに違いはありません。
イヤホンは2019年に発売されたWF-1000XM3が2016年発売のBOSE QUIETCONTROL30にのレベルに追いついたという感じです。

ここ2、3年のヘッドホン・イヤホンはワイヤレス化と接続品質、ハイレゾなど音質の向上が主な変化で、NC自体は少し性能が頭打ちになっているように感じます。
中音域から高音域にかけての音を低減できる技術の向上を今後期待したいところです。

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